『RPGツクールMV』『RPGツクールMZ』で作られたゲームはAndroidアプリとしてビルドする事も可能ですが、実際に行うとなると多くの知識が必要になり、初心者にはかなりハードルが高いです。
そこで今回はwaffさん(https://twitter.com/wafs702)が公開されているAndroid Studio プロジェクト「mv_to_android」を使って、Google Playで公開する事を前提としたAndroidビルドの手順を解説します!
「mv_to_android」の準備
以下からAndroid Studio プロジェクト「mv_to_android」をzip形式でダウンロードして解凍します。
GitHubからzip形式でダウンロードするには、「Code」から「Download ZIP」をクリックすればOKです。
解凍後の「mv_to_android-master」フォルダは、任意の名前(ゲーム名など)に変更しておくと管理しやすいです。
ツクールMV・MZのゲームをデプロイメント
次に、RPGツクールMV・MZで作成したプロジェクトをウェブブラウザ向けにデプロイメントします。
出力された「www」フォルダの名前を「htmlSource」にリネームし、先ほど解凍したAndroid Studio プロジェクトの「app」フォルダ下に移動します。
Android Studioをインストール
Android StudioをダウンロードしてPCにインストールしましょう。基本的に初期設定のままで次へ次へとクリックしていけばインストールできます。
インストールが完了したらAndroid Studioを起動し、画面に沿ってSDKなどのインストールを進めていきます(途中でライセンスの同意などが表示されるので、全てのファイルについて「accept」をチェックしましょう)
「OPEN」ボタンをクリックして、先ほどのAndroid Studio プロジェクトを開きます。
ゲームをAndroid端末で実機テストしてみよう!
まずは実際に手持ちのAndroid端末を使ってゲームをプレイできるかどうか試してみます。
ゲームをテストするためにはAndroid端末の設定を変更し、PCから直接アプリをインストールできる状態にする必要がありますので、その手順を解説します。
PCとAndroid端末を接続する
Android端末の「設定」画面を開き、「デバイス情報」内の「ビルド番号」を連打してください。何回か連打すると、端末の「開発者向けオプション」がONになります。
次に、「設定」画面の「システム」→「開発者向けオプション」から「USBデバッグ」をONにして、PCとスマホをUSBケーブルで接続します。
接続に成功していれば、Android Studioの画面右上の方に接続したスマホ名が表示されていると思います。
あとは、丸印で囲んだボタンを押せば実機テストする事ができます。
「ワイヤレスデバッグ」をONにすれば、USBケーブルが無くてもデバッグできます。Android Studioのデバイス選択で「Pair Devices Using Wi-Fi」を選択。画面にQRコードが表示されるので、スマホの「ワイヤレスデバッグ」項目をタッチして「QRコードによるデバイスのペア設定」でQRコードを読み込むとPCとスマホが接続されます。
リリース用アプリのビルド
それではリリース用アプリをビルドするための準備をしていきます。
まずは、このままではアイコン画像がデフォルトの状態なので、ゲームオリジナルのアイコン画像に変更していきましょう。
アイコン画像の設定
画面左側のファイル一覧から「res」を右クリックして、「New」の「Image Asset」をクリックします。
「Source Asset」の「Path」に使用したい画像のパスを設定(あらかじめツクールの「icon」フォルダにオリジナルのアイコン画像を作成しておいて、その画像を使用すると良いです)画像は「resize」で大きさを調節できます。
次に「Next」をクリックし、「Res Directory:」を「release」に変更してから「Finish」をクリック。これでアイコン画像の設定は完了です。
アプリ名とパッケージ名を変更する
アプリ名を変更するには、画面左側のファイル一覧から「res\values\string.xml」をダブルクリックして、「<string name=”app_name”>mv_to_mobile_android</string>」の「mv_to_mobile_android」部分を変更します。日本語でOKです。
次にパッケージ名を変更します。パッケージ名は日本語NGです。
画面左側のファイル一覧から「Gradle Scripts\build.gradle(Module: mv_to_mobile_android.app)」をダブルクリックで開き、「applicationId “com.example.mv_to_mobile_android”」の「mv_to_mobile_android」部分だけ任意のパッケージ名に変更します(「com.example.」は変更しないでください)
変更したら上の方に「Sync Now」が現れるのでクリックしてください。
次に、「app\java\com.example.mv_to_mobile_android」フォルダの上で右クリックして、「Refactor」の「Rename」を選択。
「In Whole Project」ボタンをクリックし、任意のパッケージ名を入力したら「Refactor」ボタンをクリックします。画面の下の方に「Do Refactor」ボタンが現れた場合は、それをクリック。
次に、「Gradle Scripts\setting.gradle(Project Setting)」をダブルクリックで開いて「rootProject.name = “mv_to_mobile_andorid”」の「mv_to_mobile_andorid」部分も変更。上の方に「Sync Now」が現れるのでクリックしてください。
パッケージ名「com.example.mv_to_mobile_android」の「com.example」部分を変更するには、まず「app\java\com.example.mv_to_mobile_android(前の段階でmv_to_mobile_androidを変更している場合は変更後の名前が表示されています)」の上で右クリックして、「Refactor」「Move Package or Directory…」を選択。
「Move package ‘com.example.mv_to_mobile_android’ to another package」を選択して「OK」、次の画面も「Yes」をクリックします。
次の画面で「To package:」に変更後の名前を入力して「Refactor」をクリック。
次の画面も「Yes」をクリック。画面の下の方に「Do Refactor」ボタンが現れた場合は、それをクリック。
メニューから「Build」「Clean Project」をクリック。「app\java」以下に以前のパッケージ名のフォルダが残っていたら削除して大丈夫です。
対象のSDKバージョンを更新
画面左側のファイル一覧から「Gradle Scripts\build.gradle(Module: ○○.app)」をダブルクリックで開き、「compileSdkVersion」と「targetSdkVersion」の数値を31以上に変更します。上の方に「Sync Now」が現れるのでクリックしてください。(2022年9月時点でGoogle PlayへアップロードするためにはSDKバージョン31以上を対象にする必要があるためです。今後も対象バージョンが変更されますので随時変更する必要があります)
なお、バージョンを31以上にするとGoogle Playへのアップロード時に以下のようなエラーが表示される場合があります。
「app\manifests\AndroidManifest.xml」をダブルクリックで開いて、以下の画像の箇所に「android:exported=”true”」の記載があるか確認しましょう。無ければ手動で追加してください。
リリース用ビルドの準備
左下の「Build Variants」タブを開いて「Active Build Variant」を「release」に変更します。(実機テストをしたい時は「debag」に戻します)
リリース用のキーストアを作成
続いて、アプリが本物だと証明するための鍵(キー)と、鍵の入れ物(キーストア)を作成していきます。
メニューの「Build」から「Generate Signed Bundle / APK」をクリックします。
「APK」を選択して「Next」。キーストアの指定ウィンドウが開くので、「Create new」ボタンをクリックして新しいキーストアを作成していきます。
- Key store path:キーストアの保存先を指定。任意のファイル名を入力
- Password:キーストアのパスワードを設定。2回入力する必要あり。
- Alias:キーの名前を任意に設定
- Password:キーのパスワードを設定。2回入力する必要あり。キーストアのパスワードと同じで良い。
- Validity (years): キーの有効期間を年単位で設定します。25年以上が推奨されているようですが、期限切れになった時の事を考えると面倒くさいので100年で設定しておきます。
- Certificate:証明書の所有者に関する情報。必ずどれか1つは入力の必要があるので「Country Code(XX)」に「JP」と入力しておけばOK
Key storeはキーの入れ物で、Aliasはキーの事。キーの入ったキーストアを1つ作成しておけば、複数のアプリに同じキーを使って署名可能です。作成したキーストアは今後アプリのアップデートの際などに必要になる大事なものなので、パスワードは無くさないよう厳重に管理しましょう。
各項目の入力が終わったら、「OK」をクリック。生成したキーストアの情報が入力されている事を確認したら「Next」。「release」を選択して「Finish」をクリックするとビルドが始まります。
ビルドが完了したら「app」「release」フォルダに「app-release.apk」というファイルが出来上がっています。
リリース用アプリをAndroid端末にインストール
では、作成したリリース用アプリを実際にスマホにインストールしてみましょう。なお、デバッグ時にインストールされた同じ名前のアプリがスマホに存在するとエラーが出るので、あらかじめアンインストールしておいてください。
Android SDK のパスを通す
アプリをPCから直接Android端末にインストールするにはAndroid SDKの機能が必要なので、まずはそれを使えるようにします。
Android Studioをインストールしている場合はすでにAndroid SDKがインストールされているはずなので、そのパスを通しておきます。Windowsのスタートボタンの上で右クリックして「システム」を開き、「システムの詳細設定」をクリック。「環境変数」を開きます。
システム環境変数の一覧から「Path」を選択して「編集」をクリック。
「新規」をクリックして、「C:\Users\ユーザー名\AppData\Local\Android\Sdk\platform-tools」と入力(ユーザー名の部分は自身のPCのユーザー名に置き換えてください)
完了したら「OK」をクリックして終了です。
もし上記のパスが使えない場合は、Android Studioのメニューから「File」「Settings」を開き、「System Settings」内の「Android SDK」をクリックします。すると「Android SDK Location:」という欄にAndroid SDKのパスが記載されているので、これの末尾に「\platform-tools」を加えたパスを使ってください。
リリース用アプリの実機テスト
「コマンドプロンプト」を起動し、試しに「adb」と入力してエンターキーを押してみてください。エラー等が出ず、長い文章が表示されていれば成功です。
コマンドプロンプトの起動の仕方が分からない場合は、windowsの検索窓に「コマンドプロンプト」と入力してEnterキーを押せばOKです
PCとスマホをUSBケーブルで繋ぎ、「USBデバッグ」がONになっている事を確認してください。
「コマンドプロンプト」に、「adb install C:\Users\ユーザー名\Desktop\mv_to_android-master\mv_to_android-master\app\release\app-release.apk」のようにリリース用アプリのパスを入力します。ご自身の保存場所に合わせてパスは変更してください。入力したらエンターキーでインストールを実行します。
「Success」と表示されたら成功です。スマホにアプリがインストールされているはずなので、起動確認してみてください。
Google Play用アプリのビルド
先ほどは「APK」ファイルを作成しました。かつては「APK」ファイルをGoogle Playの公開アプリとしてアップロードできたのですが、現在は「Android App Bundle」形式でビルドしないとGoogle Playにはアップロードできないようです。
なので少々手間ですが、aab形式でビルドし直しましょう。リリース用アプリの実機テストが必要無いという方は「APK」ビルドをせずにいきなり「Android App Bundle」でビルドしてもOKです。
「APK」ビルドの時と同様に、メニューの「Build」から「Generate Signed Bundle / APK」をクリックします。今回は「Android App Bundle」を選択しましょう。あとの手順は「APK」の時と同様です。
実際にGoogle Playで公開したゲームがこちら
上記手順で実際にツクール製ゲームをGoogle Playに公開してみました。どのように動作するのかといった参考にしていただければ幸いです。
アプリに広告を表示して収益化するには
せっかくゲームをアプリ化したのですから、バナー広告やインタースティシャル広告を表示して、ゲームを収益化してみましょう!今回使用させていただいたAndroid Studioプロジェクトにはそのための機能が備わっています。
詳細は以下の記事で解説していますので、ぜひご覧下さい!